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詩と小説
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 彼女と一緒に他愛のない会話を繰り広げながら、大通りを歩いていた時だった。乗用車がスリップしたのか、僕たちの方へ突っ込んできた。彼女を突き飛ばすだけで精一杯だった。僕は地面に倒れこんでいて、真っ赤な血だけしか見えなかった。指一本動かすことすらできない。知らない人の悲鳴が耳障りだった。僕はここで死ぬらしい。こんなに早く終わりがくるなんて思ってなかったけど、仕方ない。それが僕という人間の運命ならば受け入れるしかない。今さらあがいたってどうにもならない。でも、寂しくはない。だって、君の僕を呼ぶ声を最後に聞けたから。
 
 桜が舞う頃、女がいた。真新しい墓の前に立っていた。愛おしそうに笑みを浮かべ、静かに涙を流していた。涙を拭うと墓に向かって言った。
「死んだ人間をいつまでも想って、思い出に生きるなんて嫌だからね」
 女は歩き出し、桜吹雪の中へと消えていった。
 
 僕はここにいるよ。いつまでも君を想ってる。置いてきてしまったことを許してくれるだろうか。強く生きてほしいけど、たまには僕を思い出して、会いに来てほしいな。

-fin-
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