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詩と小説
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 12月22日は終業式だ。砂夜が在籍する草針学園高等部でも朝から終業式が行われ、明日から約2週間の冬休みに入る。だが、砂夜はそうではなかった。終業式の翌々日、砂夜はいつもよりやや遅い時間に起床し、学校に行く準備をしていた。冬休みは生徒会の活動はない。
「今回も補習にひっかかったのか」
長期休暇であろうと生活ペースを乱さない聖樹は暇を持て余している様子だった。夏希はまだ起きてこない。
「そう。数学と物理と英文法。」
「相変わらずだね。」
砂夜の補習は毎度のことである。聖樹もいちいち驚くことはしないが、若干は呆れ気味である。
「違うもん。古典と現社はセーフだったの。」
「そういう問題じゃない。」
「私以外にも結構いるしね。」
「そういう問題でもない。なんで物理なんて難しい科目選択したの?生物か地学にしとけば良かったのに。」
「…気分?」
「まぁ留年さえしなければ別にいいんだけど。」
「お姉ちゃんもやればできるんだから!!」
「やらないとできないんだろ。皆そう言うんだよな。言い訳としては3流。」
「あんたねぇ…!!」
「中学受験した時のやる気を少しは出したら?」
「勉強はその時に嫌ってほどやったからもういいの。高校・大学と受験なしで進学できるから草学選んだんだし。あんただってそうでしょ?」
「まぁそうだけどね。地獄見たし。でも僕は砂夜と違って危ない橋は渡らない。勉強が出来たほうが社会に出る時の選択肢は広いしね。」
「そう…。じゃそろそろ行くけど。あ、なっちゃん早めに起こしといてね。」
「昨日、遅くまでゲームしてたみたいだけど。」
「だからよ。まだ小学生なんだから。」
「気が向いたらね。行ってらっしゃい。」
「行ってきます…。」
 
 冬休みではあるが学校は賑やかだった。部活や同好会が活動しているため人が多い。砂夜と同じように補習を受けに来た生徒も少なくない。また、この時期は中等部の生徒や高等部受験を考えている外部の中学生やその保護者が見学に来ることも多い。
 教室にはすでに補習にひっかかった生徒のほとんどが集まっていた。朝一の数学は一番人数が多く、2年生全体で20名弱。補習に参加するメンバーは1年生のころからあまり変わり映えしない。他の科目の補習でもメンバーは固定化されつつある。数学に限って言えば、砂夜は1年生の夏休みから皆勤だ。
 砂夜は友達の相沢千紗を見つけ、彼女のとなりの席に座った。
「砂夜も数学は補習になると思ったの。」
「まぁ毎度のことだしね。私もちぃがいると思ってた。」
 千紗とは中等部の時に仲良くなったが、高等部に入ってからは同じクラスになったことはない。だが、今でも一緒に出かけたりする。
「砂夜は数学以外には何があるの?」
「物理と英文法。」
「今回は少ないんだね。私は英文法と化学と地理と古典と現社だったかな。」
「相変わらず凄いラインナップね。先生方が不憫になるくらい。」
「私だって大変なんだから。毎日、朝から夕方まで補習なんだもん。あ、現文も。」
「日本人なのに。」
「だって期末は近代文豪がメインだったんだもん。誰が何書いたかなんて覚えられないよ」
「まぁ私もちぃのこと言えないんだけどね。」
 砂夜も成績面では問題児に入るが上には上がいる。留年しなかったことを奇跡だと言う教師もいた。よくこの学校に入れたものだ。一貫制ということもあり、中等部入学後は勉強を全くしなくなる生徒も多く、砂夜と千紗はその最たる例であった。
 
 数学の補習の後、砂夜と千紗はそのまま一緒に英文法を受けた。物理は年明けに実施されるため、昼前に砂夜は帰れるのだ。だが千紗にはまだ古典と現代文と現社が待ち構えている。彼女は暗くなるまで帰れないのだ。今日はクリスマスイヴだが、そんなことは関係ない。この日最終の現社では、もうやる気の欠片も残っていなかった。現社は数学や英語に比べると人数が少なく、全体的にだれた雰囲気になってしまっている。
「やる気出せー。進級できなくてもいいのか。」
 現社担当の教師が鼓舞するがあまり効果はない。
「先生だってなクリスマスに補習なんて嫌なんだ。」
「俺たちだって嫌だよ。」
「だったら補習なんて受けずに済むように日頃から…。」
「でも、先生だってせっかくのイヴに予定ないんでしょ?」
「お前らのために予定あけてんだよ。」
「彼女いないんでしょ?」
「いないけど…。作ってる暇ないんだよ!!」
「言い訳は要らないから。」
「もー待ち合わせに遅れちゃう。」
「そこ!!デートと俺の補習をどっちが大切だ?」
「デート。自分に相手がいないからって僻まないでよ。」
「先生だって俺たちの補習がなかったら寂しくて侘しいイヴだったんだろ?じゃ俺たちに感謝しないとな。」
「お前らな…!」
「いいから早くしてよ。彼氏と別れたら先生のせいだからね。」
 千沙はちょっとは頑張った方がいいのかもしれないと思い、ため息をついた。
 
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無題
穴井秋乃 URL 2012/01/08 13:15 編集
肴倉家のシリーズって、はととぎすに書いていたシリーズだよね。懐かしい。
私も、何であのとき物理を選択したのか未だに謎だ。物理って難しすぎるよね。
話は変わるけれど、サイトのスリム化をしました。tumblrにまとめてどーん。リンクも張ったので、よろしく。
  
無題
紗樹 2012/01/22 19:43 編集
肴倉家を覚えていてくれたとは。
リンクありがとう。私もこそこそっと張ったよ。
  
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