詩と小説
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大学に入っても彼女は相変わらずだった。彼女と過ごした大学生活は1年足らずだったが誰かと一緒にいるところを見たことはなかった。高校の時はある程度話をするくらいのクラスメートはいたが、大学では自分が積極的にならないと友達はできない。
「人付き合いなんて煩わしいだけよ。女の子同士ならなぜか陰口とかが付き物だしね。無駄に褒め合うのも嫌い。明らかに太ってる人に『ダイエットなんて必要ないよ。やせてるのに』とかね。相手の向上心を削ってるのか、それとも自分より劣った存在がいてほしいからなのか、そのへんはよくかわらないけど。軽い付き合いなら上辺だけの言葉で会話は成立するけど、そんなのに意味はないし。だからと言って本音を話せるまで深い付き合いになるにはそれなりに時間が必要でしょ。そうこうしてるうちにどろどろした人間関係の出来上がり。社会に出たら社交辞令とか嫌いな人相手にゴマすりが必要になってくるし、周りにいる人を選べないことも少なくない。そんなのを嫌になるほど経験する羽目になるのよ。今くらいは自由に過ごしてもいいでしょ。第一、私は友達がいなくて苦労したことはないもの」
強がりでもなんでもない。これが彼女だ。陰口が嫌いな理由も僕は知っていた。面倒だからとか、人を悪く言えない根っからの優しい人間だからとかじゃない。悪い思い出があるからだ。
高校の頃、一部から尋常じゃないほど嫌われていた。いわゆるイジメというのかもしれない。そういえば、僕たちの出会いも理緒が絡まれていたからだった。理緒が直接なにかされたってことは少なかったが、あらぬ噂が流れたことは多かった。理緒の存在そのものを否定するひどいものも少なくなかった。そんな噂を一切気にしない人もいたが、過剰反応していた人もいた。理緒が多少仲良くしていたのは前者だけだった。後者はからかう以外には理緒に近づこうとすらしなかった。理緒は気にしていないようだったが、いい気分ではないに違いない。だから嫌いなんだ。
群れるのが嫌い。なれ合いも嫌い。意地っぱりで強がり。それが理緒だった。そんな彼女を僕はかわいいと思っていた。いつの間にか愛しいとも思うようになった。永遠なんて信じてないけど、できるだけ一緒にいたいと願った最初で最後の人だ。
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